個人事業主として建設業を営んでこられた方が法人成りをされた際、「決算がまだ来ていないけれど建設業許可を申請できるのか」というご相談をいただくことがあります。結論から言えば、法人設立後まだ一度も決算を迎えていない状態でも、建設業許可の申請は可能です。今回はその際のポイントを整理します。
1、決算未到来でも申請できる理由
建設業許可の財産的要件では、一般建設業の場合、自己資本の額が500万円以上あること、または500万円以上の資金調達能力があることが求められます。
このうち自己資本の額は、通常であれば直前の決算期の財務諸表で確認します。しかし法人設立直後でまだ決算を迎えていない場合は、確認できる決算書が存在しません。そこで、決算未到来の新規設立法人については、別の資料によって財産的要件を確認する取扱いが定められています。
2、資本金500万円以上で設立している場合
最初の決算期が未到来の新規設立法人で、資本金の額が500万円以上である場合は、登記事項証明書(商業登記簿)の原本を提出することで財産的要件を証明できます。
法人成りを検討している段階で建設業許可の取得も視野に入っているのであれば、資本金をいくらに設定するかは重要な判断ポイントです。設立時に500万円以上としておけば、登記事項証明書だけで財産的要件をクリアできるため、証明で悩む必要がなくなります。
3、資本金が500万円未満の場合
資本金を500万円未満で設立している場合は、登記事項証明書による証明ができません。この場合は、500万円以上の資金調達能力があることを証明する方法をとります。
具体的には、金融機関が発行する預金残高証明書の原本を提出します。この際、次の条件を満たしている必要があります。
500万円以上の残高等があること
証明日や残高日が申請日前1か月以内であること
証明日から1か月を過ぎてしまうと使えなくなりますので、申請書類一式の準備が整ってから残高証明書を取得するのが安全です。書類作成に時間がかかっている間に有効期間が切れてしまい、取り直しになるケースもあります。
4、決算未到来の場合に記載を省ける書類
法人設立後まだ決算を迎えていない場合、当然ながら決算数値や工事実績が存在しません。そのため、次の書類については内容の記載を省くことができます。
損益計算書
完成工事原価報告書
株主資本等変動計算書及び注記表
工事経歴書
直前3年の各事業年度における工事施工金額
これらは無記入のまま、「決算未到来のため実績ございません」とだけ記載して提出します。数字を無理に埋める必要はありません。
なお、貸借対照表については設立時点の内容で作成して提出します。実績がないからといってすべての財務関係書類が不要になるわけではない点にご注意ください。
5、個人事業主時代の経験は引き継げる
法人成りをした場合、法人としての営業実績はまだありませんが、経営業務の管理責任者や専任技術者の要件については、個人事業主時代の経験を使って証明することができます。
経営業務の管理責任者
個人事業主として建設業を営んでいた期間は、経営経験として扱うことができます。証明には当時の確定申告書や、建設業を営んでいたことが分かる工事請負契約書、請求書などを使用します。
専任技術者
個人事業主時代に実際に工事に従事していた期間は、実務経験として扱うことができます。証明には請負工事の請求書などを使用し、あわせて在職期間を裏付ける資料を用意します。
つまり法人としては新設であっても、代表者ご自身の経験年数が積み上がっていれば、要件を満たせるケースは多くあります。
6、注意しておきたい点
社会保険への加入
法人になると社会保険への加入義務が生じます。建設業許可の申請では適切な社会保険への加入状況も確認されますので、設立後は早めに手続きを進めておきましょう。
決算期の設定
設立時に決める決算期は、その後の決算変更届の提出時期にも影響します。繁忙期と重ならないように設定しておくと、毎年の手続きが進めやすくなります。
まとめ
法人成り直後で決算を迎えていない場合でも、登記事項証明書や預金残高証明書によって財産的要件を証明することで、建設業許可の申請は可能です。個人事業主時代の経験も活かせますので、法人成りを機に許可の取得を検討される場合は、資本金の設定など早い段階からの準備が有効です。
法人成りにあわせて建設業許可の取得を検討されている方は、お気軽にご相談ください。