専任技術者(営業所技術者)の要件とは?資格・実務経験・常勤性を解説

この記事のポイント

令和6年12月13日の建設業法改正で、「専任技術者」は「営業所技術者」に名称が変わりました(要件そのものは変更なし)
要件を満たすルートは①国家資格 ②指定学科+実務経験 ③実務経験10年の3つ
令和5年7月の改正で、「技士補(1次検定合格)+実務経験3〜5年」というルートが新設され、10年待たずに要件を満たせるケースが大幅に増えました
見落とされがちなのが常勤性。資格があっても「その営業所に常勤していると認められない」と要件を満たしません
建設業許可の要件で、いちばん多くの会社がつまずくのがここです

建設業許可の相談をお受けしていて、取得できるかどうかの分かれ目になることが最も多いのが、この専任技術者(営業所技術者)の要件です。

財産的基礎(500万円)は資金繰りで何とかなることもありますし、経営業務の管理責任者は社長ご自身が該当するケースが大半です。しかし技術者要件は、「資格を持っている人がいるか」「経験を証明できるか」という、その場では動かせない事実にかかってきます。

一方で、令和5年以降の法改正で要件は着実に緩和されています。「以前調べたときは無理だと言われた」という会社でも、今なら取れるというケースが実際に出てきています。この記事で最新の要件を整理します。

1. まず名称の話:「専任技術者」は「営業所技術者」になりました

令和6年12月13日施行の改正建設業法により、呼び方が次のように変わりました。

区分 改正前 改正後
一般建設業 専任技術者 営業所技術者
特定建設業 専任技術者 特定営業所技術者
両者の総称 — 営業所技術者等
重要なのは、これは呼称の変更であって、必要な資格や実務経験の中身は変わっていないという点です。現在すでに専任技術者として届出をしている方は、そのまま営業所技術者として認められます。

ただし申請書類の様式や記載は新しい名称に変わっていますので、ご自身で申請書を作成される場合は、古い様式や古い解説記事を参考にしないようご注意ください。

なお現場では今も「専技(せんぎ)」と呼ばれることが一般的です。この記事でも、わかりやすさを優先して「専任技術者(営業所技術者)」と併記します。

2. 営業所技術者になれる3つのルート

建設業法第7条第2号は、次のいずれかに該当する人を営業所ごとに専任で置くよう求めています。どれか1つを満たせば構いません。

ルート①|許可を受けたい業種に対応する国家資格を持っている

最も確実で、書類も簡単なルートです。資格証の写しを提出すれば足り、実務経験の証明が一切不要になります。

代表的な資格は次のとおりです。

施工管理技士(1級・2級/土木・建築・電気工事・管工事・造園・建設機械・電気通信)
建築士(1級・2級・木造)
技術士(建設部門ほか)
技能検定(1級は実務経験不要、2級は合格後3年の実務経験が必要/※平成16年度以降の合格者は1年)
電気工事士(第一種は免状取得後の実務経験は不要、第二種は免状取得後3年)、消防設備士、給水装置工事主任技術者 など
自社の社員が持っている資格が、取りたい業種に対応しているかどうかは業種ごとに細かく決まっています。「1級土木施工管理技士を持っているから何でも取れる」というわけではありませんので、まずは資格証を手元に確認してみてください。

ルート②|指定学科を卒業+実務経験(3年または5年)

許可を受けたい業種に対応する指定学科(土木工学、建築学、電気工学、機械工学、都市工学、衛生工学など)を卒業していれば、10年より短い実務経験で要件を満たせます。

学歴 必要な実務経験
大学・短大・高専(指定学科)卒業 卒業後3年以上
高校・中等教育学校(指定学科)卒業 卒業後5年以上
専門学校(専門士・高度専門士) 3年以上
専門学校(上記以外) 5年以上
ルート③|実務経験10年以上

資格も指定学科もない場合の受け皿となるルートです。役職は問われません。現場の職人、見習い、現場監督、いずれの立場でも、その業種の建設工事に従事していた期間としてカウントできます。前職での経験も通算可能です。

ただし後述するとおり、この10年を「証明する」ことが実務上の最大の壁になります。

3. 【要チェック】技士補で実務経験が3年・5年に短縮できます

ここが、近年でいちばん見落とされているポイントです。

令和5年7月1日の建設業法施行規則改正により、施工管理技術検定の第一次検定に合格した人(=◯級◯◯施工管理技士補)が、指定学科の卒業者と同等に扱われることになりました。

合格した検定 同等とみなされる学歴 必要な実務経験
1級の第一次検定合格(1級技士補) 大学の指定学科卒業と同等 合格後3年以上
2級の第一次検定合格(2級技士補) 高校の指定学科卒業と同等 合格後5年以上
対応関係は、土木施工管理・造園施工管理は土木工学、建築施工管理は建築学、電気工事施工管理は電気工学、管工事施工管理は機械工学とされています。

何が変わったのか(具体例)

たとえば機械器具設置工事業は、専任技術者になれる直接の国家資格が存在せず、従来は指定学科の卒業者でなければ実務経験10年を証明するしかありませんでした。

しかし改正後は、建築・電気工事・管工事のいずれかの施工管理技術検定に合格していれば、指定学科を出ていなくても合格後3年(1級)または5年(2級)の実務経験で要件を満たせます。

「第二次検定に落ちて資格は取れていないから関係ない」と思い込んでいる社員さんが、実は要件を満たしている——という例は少なくありません。社内の合格者を一度洗い出してみる価値は十分にあります。

注意点

実務経験の起算日は合格発表日以降です。合格前の経験は含められません。
指定建設業7業種(土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)と電気通信工事業は対象外です。これらの業種は従来どおりの要件になります。
4. 実務経験10年ルートの「証明」という壁

実務経験は、自己申告では認められません。書面で立証する必要があります。

必要になる主な資料

① 工事に従事していたことの証明

請求書
工事請負契約書
注文書・注文請書

② その会社に在籍していたことの証明

厚生年金の被保険者記録照会回答票
雇用保険の被保険者記録
前職の会社による実務経験証明書(押印・協力が必要)
実務上、特に注意していただきたい3点

(1)業種ごとに10年が必要です 2業種を実務経験で取りたい場合、原則としてそれぞれ10年ずつ、合計20年分の証明が必要になります。同じ期間を2つの業種で二重にカウントすることはできません。

(2)期間が「途切れていない」ことを求められます 証明期間を通じて工事の実績が確認できるよう、年ごとに資料を求められます。(請求書は年に4枚くらい)10年分の請求書や契約書が残っていない、という理由で断念されるケースが実際にあります。

(3)前職の協力が得られるかどうか 退職した会社に証明を依頼する必要がある場合、関係性によっては難航します。独立を考えている段階で、在職中に資料を確保しておくことを強くおすすめします。

なお、証明の具体的な運用(求められる資料の頻度や様式)は許可行政庁によって異なります。兵庫県知事許可の場合は、管轄の土木事務所の取扱いを事前に確認しておくと確実です。

5. 意外な落とし穴:「常勤性」が認められないケース

資格や経験の要件をクリアしても、その人が営業所に常勤していると認められなければ、要件を満たしません。ここでつまずく会社が思いのほか多くあります。

常勤性を証明する書類

社会保険標準報酬月額決定通知書
住民税特別徴収税額通知書
賃金台帳、出勤簿
厚生年金の被保険者記録


常勤と認められない可能性が高いケース

ケース 理由
他社から給与を受けている 自社への常勤性に疑義が生じる
他の会社の常勤役員を務めている 他社で常勤していると見られる
別に個人事業を営んでいる 専任性を欠くと判断されうる
住所が営業所から著しく遠い 毎日通勤できるとは認められない
他の営業所の技術者を兼ねている 営業所ごとに専任が必要
「知り合いの有資格者に名前だけ貸してもらう」といった形は、常勤性の確認で明らかになりますし、発覚すれば虚偽申請として許可の取消しにつながります。必ず実態を伴う配置にしてください。

6. 特定建設業(特定営業所技術者)の場合

元請として一定金額以上を下請に出す場合には、特定建設業許可が必要になります。この場合の技術者要件は一段厳しくなります。

原則として、1級の国家資格者(1級施工管理技士、1級建築士、技術士など)
または、一般建設業の要件を満たしたうえで、元請として4,500万円以上の工事について指導監督的な実務経験を2年以上有すること
指定建設業7業種(土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)については、1級資格者または国土交通大臣認定者に限られます(指導監督的実務経験のルートは使えません)
なお、令和7年2月1日施行の政令改正により、特定建設業許可が必要となる下請代金の合計額の下限は5,000万円(建築一式工事は8,000万円)に引き上げられています。古い金額(4,500万円/7,000万円)で判断しないようご注意ください。

7. 令和6年改正で認められた「現場との兼務」

これまで、営業所技術者は営業所に専任するのが原則で、専任が必要な工事現場の主任技術者・監理技術者を兼ねることは認められていませんでした。技術者が限られる中小企業には、これが大きな負担でした。

令和6年12月13日施行の改正により、次の要件をすべて満たす場合に限り、営業所技術者等が1件の工事現場の主任技術者等を兼務できるようになりました(建設業法第26条の5)。

その営業所で請負契約を締結した工事であること
兼ねる工事現場は1件まで
営業所から現場まで1日で巡回可能で、移動時間がおおむね2時間以内
現場に連絡員を配置すること
施工体制を確認できる情報通信機器(カメラ、Web会議システム等)を設置すること
人員の配置を示す計画書を作成・保存すること
会社と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
要件は細かく、また運用は行政庁によって差があります。活用を検討される場合は、事前に管轄庁へ確認されることをおすすめします。

8. 専任技術者が退職したらどうなる?

許可の取消しに直結しかねない、最も注意すべき場面です。

営業所技術者は許可の取得要件であると同時に、許可を維持するための要件でもあります。退職や死亡で不在になり、後任を置けなければ、許可要件を欠くことになります。

また、変更があった場合は2週間以内に変更届の提出が必要です(建設業法第11条)。これを失念していて、更新のタイミングで指摘されるケースがあります。

対策として現実的なのは次の2つです。

有資格者を複数確保しておく(同一業種で2人以上が要件を満たしていれば、1人抜けても許可は維持できます)
若手に第一次検定を受けさせる——前述のとおり、1級技士補なら合格後3年で要件を満たせます。後任育成のロードマップとして現実的な選択肢になりました
よくあるご質問

Q. 社長が経営業務の管理責任者と専任技術者を兼ねることはできますか? A. できます。要件を両方満たしていれば、同一人物が兼ねて構いません。一人親方から法人化された会社では、この形が一般的です。

Q. 営業所が2か所ある場合は? A. 営業所ごとに配置が必要です。1人が2つの営業所の技術者を兼ねることはできません。

Q. 実務経験に、見習い期間や雑用の期間は含まれますか? A. 実際にその業種の建設工事に従事していた期間であれば、見習いでも含められます。ただし、工事着手前の準備作業や、工事と関係のない事務・雑務は実務経験に含まれません。

Q. 資格は持っているが、取りたい業種と対応しているか分かりません。 A. 資格と業種の対応表は国土交通省が公表しており、非常に細かく分かれています。資格証をお手元に、一度ご相談ください。対応していない業種でも、実務経験を組み合わせれば取得できる場合があります。

まとめ

「専任技術者」は令和6年12月から「営業所技術者」に名称変更(要件の中身は同じ)
要件は①国家資格 ②指定学科+実務経験3〜5年 ③実務経験10年のいずれか
技士補(第一次検定合格)でも、合格後3年(1級)・5年(2級)で要件を満たせるようになった
実務経験10年ルートは、証明資料をそろえられるかどうかが勝負
資格があっても常勤性が認められなければ要件を満たさない
「うちの社員で要件を満たす人がいるのか分からない」「10年分の資料が揃うか不安」という段階で構いません。行政書士なかお事務所では、姫路市を中心に建設業許可の取得をサポートしています。資格証や過去の請求書をお手元にご相談いただければ、取得の可能性を具体的に判断いたします。

なお、兵庫県知事許可の申請窓口は、姫路市に主たる営業所がある場合は中播磨県民センター 姫路土木事務所 建設業課(姫路市北条1丁目-98)です。姫路市のほか、相生市・たつの市・赤穂市・宍粟市・市川町・福崎町・神河町・上郡町・太子町・佐用町を管轄しています。

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